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頭が良いという評価

 

 最近、宮城谷昌光の『三国志』(文春文庫)を読んでいる。

 

三国志にはすごく頭が良い、いわゆる軍師と呼ばれるような人たちが出てくる。曹操配下の程昱や郭嘉などは、その卓越した判断力や予見力をもって主君を助けてきた。

 では、彼らはなぜそんなに頭が良いのだろう、ということを最近考えていたのだけども、三国志を読んでいて、「頭が良い」ということは、「物事の本質が分かっていて、それに向けて適切な手段が取れ、判断を下せる」ということだと結論が出た。

本質というのはその事物の中で一番重要な事という意味で、それに向けて何をすべきなのか、頭の良い人は常に良く考えて行動している。

当時の名臣、名将がそう称えられるゆえんは、物事の本質を理解しているからである。

 

例えば、軍師の話ではないが、曹操配下の将軍夏候淵は、賊の討伐に際し軍議を開いた。夏候淵配下の諸将たちは、まっすぐに本陣を狙って攻めつぶすべきだと主張したが、ただ朱霊という将軍だけは異見を呈した。

朱霊は、本陣を攻めつぶして賊を討伐しても、大将を逃がしてしまい、その息の根を止めることができなければ再び叛乱を起こすため、それでは真の勝利とは言えない。ここでは時間をかけて城を一つ一つ包囲し殲滅して、確実に大将を討ち取るのが上策であると言った。

夏候淵は朱霊の意見を採り、賊を完全に壊滅させた。

 

朱霊が本陣を攻めつぶすのではなく、時間をかけて一つ一つ城を包囲して確実に敵を殺すという発想に至ったのは、彼が「戦いの本質」というものを理解しているからである。

 「戦いの本質」とは、「完全な勝利を収めてその害を取り除くことである」と言える。そのために採るべき手段は、ただ敵を攻撃して退散させればいいというものではなく、敵が再び立ち上がり害を為さないように徹底的に叩き潰すか、あるいは十分に慰撫して再び敵対してこないようにすることだ。朱霊には、それが分かっていた。

 

本質が分かるからそれに向けてどのような手段を採ればいいのかということが分かる。そして、それが分かる者には頭が良いという評価が下される。